島貫智行教授が組織学会高宮賞(著書部門)を受賞しました。

2018/06/18

shimanuki1.jpg 2018年6月9日~10日、東京大学で開催された2018年度組織学会研究発表大会におきまして、島貫智行教授がその著書『派遣労働という働き方―市場と組織の間隙』(有斐閣、2017年)によって、栄えある組織学会高宮賞(著書部門)を受賞されました。高宮賞は、組織科学の領域において、前年に研究書として出版された研究業績の中で最高の評価のものに授与されます。経営学において、日本で最も権威のある賞の一つです。

 島貫先生は、人材マネジメント論を専門とし、一橋大学商学部では労務管理論の講義を担当しています。人々が企業で幸せに働くとはどういうことか、そのためにはどういったマネジメントが必要かという問題意識に基づいて、これまで幅広く研究を進めてこられました。今回の著書では、現在、日本で大きな問題になっている派遣労働に焦点を当て、その労働の実態や、働く人たちの意識、派遣先および派遣元企業間の制度の詳細などを実際のデータに基づいて浮き彫りにしました。これはこれまでにない多面的で詳細な研究であり、そのことがこのたび当該領域における先駆的な業績として高く評価されました。

 派遣労働とは、労働者が人材派遣会社と労働契約を結び、その業務命令によって他社で働く労働形態を指しており、21世紀に入って以後、急速に重要性を増しています。一般的には、雇用の柔軟性を確保したい派遣先企業と、働き方の柔軟性を望む労働者を、派遣元となる人材派遣業が仲介するという形態をとっています。このことによって、派遣元企業と派遣先企業との間で、労働者との雇用関係と指揮命令関係が分離をすることになるため、特有の難しさが現れてきます。本書は、質的調査で当事者視点に迫りつつ、「仕事の質」概念によって,その多様な側面を総合的に検討するところを特色としています。結論としては、サブタイトルにもあるように、派遣労働者を市場と組織の間隙に位置するものと捉え、その労働を支えるためには、労働者個人のネットワークや企業間のネットワークの充実が重要であると論じています。

 一橋大学は、前身の東京商科大学の時代から、商学・経営学の領域で長きにわたり優れた研究業績を上げてきました。日本企業の経営の実態に迫り、戦略論・組織論、マーケティング、会計学、金融論の領域で、私たちが直面する問題を解明しようとする研究が数多く行われてきました。島貫先生のこのたびの受賞もそうした伝統の系譜に連なるものです。

 本学の商学・経営学における研究成果が学界や企業社会から評価されていることが、本学の商学・経営学における高い教育水準や、学生の能力への評価、その結果としてのきわめて高い就職率にもつながっています。今後も、実際の企業社会との連携の下で、時代の先端的な経営事象を解明し、日本企業の未来を示唆する研究業績が続くことが期待されています。

 島貫先生の御著書の詳細につきましては、有斐閣ホームページをご覧下さい。(http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641164970

『派遣労働という働き方-市場と組織の間隙』
2017年4月、342ページ、定価 4,644円(本体 4,300円)

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