ジュニアフェロー・李建儒さんが台日経貿文化交流研究賞を受賞しました

2023/07/31

経営管理研究科 経営管理専攻 ジュニアフェローの李建儒(リ・ケンジュ)さんが、台日経貿文化交流研究賞を受賞しました。同賞は、台日経貿文化交流協会によるもので、若手研究者を対象に、日本と台湾の交流を促進する優れた研究を表彰しています。今回、受賞の対象となった李さんの研究は、「国際的な戦略的提携における知識転換メカニズム-台湾ファミリーマートの事例研究」*で、長年の綿密な調査研究が同協会から高く評価されたものです。

李さんは、台湾の国立中山大学で学士号を取得したのち、2015年に来日しました。日本交流協会(現在の日本台湾交流協会)の奨学金を得て、本学大学院商学研究科(現経営管理研究科)の外国人研究生として研究活動を始め、修士、博士課程を取得し、昨年、ジュニアフェローになりました。今回は、受賞の話とともに、これまでの一橋での研究生活を振り返っていただきました。

Q:李さんの研究について教えてください。

私は、修士課程の時には、日本企業の中国への進出について研究していました。その後、博士課程から、台湾への進出を研究し始めました。今回、台日経貿文化交流研究賞の対象となったのは、台湾ファミリーマートを題材とする研究ですが、他にも40年近くに渡るトヨタ自動車と和泰(ホタイ)汽車との提携や、1991年から始まった三越グループと新光グループによる新光三越についても研究しています。

Q:研究を通じて、どのような成果が得られましたか?

台湾ファミリーマートは、1988年に1号店が作られ、今では4000店舗以上に成長しています。潘進丁会長は、筑波大学で修士号を取得され、日本に対して深い理解がある経営者です。日本企業が海外に進出する際に、現地パートナーとの相互理解は不可欠で、私の研究では、特に日本企業の知識をいかに現地向けに転換できるか、そのメカニズムを台湾ファミリーマートに関する6年に渡る研究や、トヨタ自動車・三越百貨店の台湾パートナーとの共同事業研究を通じて明らかにしました。

日本企業にとって、海外への進出は異なるビジネス環境に適応する必要がありますが、特に中国には制度的に大きな違いがあります。台湾と中国も異なりますが、日本企業にとっては、まず台湾市場において成功体験を積んだ上で、中国市場に進出することで、よりスムーズな定着を図ることが可能となる、ということが分かってきました。日本企業が中国文化のマーケットで成功するフォーミュラとも言えます。

Q:一橋での研究生活をどう評価していますか?

「一橋」は台湾では多くの人が知っている有名大学ですし、特に経営学はレベルが高いので、一橋での研究を希望しました。指導いただいた先生は、主ゼミが藤原雅俊教授で、副ゼミが島本実教授でした。お二人から一橋の教育方針である「理論と現実の往復運動」で鍛えていただいたことに心から感謝しています。

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私は、来日前に日本語能力試験(JLPT)N1に合格しましたが、研究のためには高度なアカデミック・ライティングが求められたので、語学面では大変でした。大学が提供する日本語添削チューター制度の手を借りられたことと、さらに商学部・商学研究科(現在の経営管理研究科)の学生にも手伝ってもらい、語学のハンデを補うことができました。

学内には世界各国からの研究生や研究者がいるので、多様な意見を交わすことができます。また、イノベーション研究センターでは、さまざまな国際的なワークショップが行われており、そこでも海外研究者とのネットワークを作ることができます。

Q:今後の研究について教えてください。

今年は既に複数の論文が受理されました。今年度は、国内外の学会での発表を予定しています。学会によって特徴がありますので、それぞれ丁寧に準備していくつもりです。今後も引き続き、台湾をスタート地点とする日本企業の海外マーケットでの発展につながる研究を続けていきたいと思っています。

*李 建儒(2021)「国際的な戦略的提携における知識転換メカニズム:台湾ファミリーマートの事例研究」『日本経営学会誌』第 47 号, 87-100 頁
https://doi.org/10.24472/keieijournal.47.0_87