一橋大学商学部から研究者として、今旅立ちのとき/博士後期課程3年 地主純子さん①

2024/03/11

2019年に本学商学部を卒業、2021年に大学院経営管理研究科修士課程修了。博士課程3年(中野誠教授ゼミ)に在籍。論文「決算短信は他の企業情報と比較して重要か」が、2021年度証券アナリストジャーナル賞を受賞、「証券アナリストジャーナル」2022年1月号にて公開。2024年4月より上智大学経済学部経営学科の助教に就任。専門は会計学。

春からは上智大学で教員に

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一橋大学には学部から入学して、今年の3月には大学院経営管理研究科博士後期課程を修了します。春からは上智大学の会計の授業を担当し、助教として教壇に立ちます。いまは授業のシラバスを作成したり、ゼミ選考の学生面接なども始めています。担当授業は上智大学の経営学科の会計領域のもので、会計情報の有用性について教えることになります。投資家が投資の意思決定をするうえで必要な会計情報や非財務情報、それらの社会への情報開示の重要性について理解してもらいたいと思っています。

会計というと、簿記とかテキストを読んで問題を解いて、という印象があるのかも知れませんが、私が教えるのは、会計のルールではなく、アカデミックの世界を入門レベルで知るような内容です。これは2024年度からの新設科目なのですが、私自身の研究テーマに近いのでとても楽しみにしています。自分が一番得意なものと、上智大学が実施したい授業とがマッチして、この授業を担当することになりました。新入社員と同じく、初めての就職で気持ちが高ぶっていますが、上智大学には会計学の先輩方がおり、いろいろサポートしてくださるので安心して働くことができると思います。

中学、高校生時代

その頃は将来について、いろいろ迷っていました。勉強はどの科目も好きでしたので、とくに会計に絞っていたわけではなかったと思います。自分の性格としては興味のあるものを本で調べたりするのがすごく好きで、勉強や何かを学ぶことで、自分の知的好奇心を満たされるのがうれしかったです。私は中・高一貫教育の神奈川大学附属中・高等学校に通っていたのですが、部活は「なぎなた部」に所属していました。なぎなたを振る先輩方の姿がかっこよかったのと、体格に左右されずに勝てるということも魅力的でしたね。

受験に際しては、どの分野を目指すかということになりますが、もともと「企業」に興味関心がありました。企業は私たちの役に立ついろいろな物を作りだし、生活を豊かにしてくれていてありがたいなと、子どもながらに思っていたということがあります。ただ、自分の気質として数字や計算が好きで、どちらかというと理系科目のほうが得意でした。このような点から、自分の関心である社会を、得意である数値で見られるのは、「会計学」だなと思いました。私の父親も理工学部の研究者として大学で働いているので、研究室での父親の姿を見て憧れていたということもありますが、会計学がしっかりと学べて、将来は研究者としての道も用意されている一橋大学を目指しました。

研究者の入口に立つ、そして恩師中野誠教授との出会い

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卒論提出の記念写真(左 中野先生)

商学部に入学して最初の導入ゼミは金融でした。その後は、管理会計を学び、2年生の一年間は、金融工学のゼミに入りました。それはかなり数学的で、金融商品の価格決定を数式で学ぶものです。デリバティブと呼ばれる金融派生商品について、適切な価値計算の仕方を学ぶというものでした。当初は金融って面白いなと思っていたのですが、やっていくうちに何か違うなと思い始めました。そんな時、2年後半のオープンゼミで出会ったのが、企業金融ご専門の中野誠先生(経営管理研究科教授)でした。中野先生の著書を読んでみたら、「なんて面白いんだ!ここが私の家だ」と胸が熱くなりました。もともと私がやりたいと思っていたことは、経済における金融システムではなく、「企業と金融の融合」のところだと気づいたんです。そして、企業会計へと研究の軸を移していくことになります。

中野先生には、学部3年生から7年間お世話になり、多くのことを学ばせていただきました。先生は、研究において常に新しいことにチャレンジし、前に進まれています。また、知的好奇心というか、いろいろなことに興味を持たれていて、古い知識にとらわれないところがすごいなと思い、学ばせていただいています。もともと会計学というと会計数値といったものだったんですが、近年は企業のガバナンスや環境、社会といった情報も会計学のエリアとなってきています。そのため、会計学で取り扱う情報が増えてきて、新しい分野が広がってきていますので、今後も研究活動を頑張っていきたいと思います。学生に教えるということに関して、中野先生からは1年目は完璧なものは求めずに、少しずつ自分のスタイルを完成させ、学生とコミュニケーションを取り、授業の感想を聞くのも良いと思うとアドバイスをいただきました。一橋は学生と先生との距離が近く、コミュニケーションも取りやすかったので、一橋の良いところを自分の授業に取り入れられればいいなと考えています。