【一橋大学の科研費研究】「配当平準化と負債コスト、大口投資家の関係についての実証研究」/青木 康晴(経営管理研究科 教授)

2024/11/12

科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」です。ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行います。研究者によるピア・レビューという検証プロセスの利点は、研究計画の妥当性を専門家の視点からより正確に判断できるほか、応募者にとって、同じ分野の研究者に自分の研究がどう評価されるかを知る機会にもなっています。このことは、とりわけ若手の研究者にとって一つのインセンティブになっているといえます。本学の研究環境は研究大学としての文化や風土が根付いており、新規課題採択率は、例年全国1位を獲得しています。

今回は、青木康晴教授の科研費研究「配当平準化と負債コスト、大口投資家の関係についての実証研究」についてご紹介いたします。

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青木 康晴

2004年一橋大学商学部卒業、2009年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。名古屋商科大学専任講師、成城大学准教授、一橋大学准教授等を経て、2024年より現職。著書に『組織行動の会計学』(日本経済新聞出版、2024年)、共著書に『現場が動き出す会計』(日本経済新聞出版、2016年)、近年の主な論文に "Determinants of the intensity of bank-firm relationships: Evidence from Japan," The Review of Corporate Finance Studies, 2023、 "The effect of dividend smoothing on bond spreads: Evidence from Japan," International Review of Economics & Finance, 2023、 "The effect of bank relationships on bond spreads: Additional evidence from Japan," Journal of Corporate Finance, 2021 (2022年6月に日本ファイナンス学会の第10回丸淳子研究奨励賞、同年9月に日本経営財務研究学会の学会賞を受賞)がある。

研究テーマ:「配当平準化と負債コスト、大口投資家の関係についての実証研究」

研究期間(年度):2022 - 2024  研究種目:基盤研究(C)  審査区分:小区分07060:金融およびファイナンス関連

研究計画:

本研究では、日本企業のデータを用いて、配当平準化に関する2つの実証分析を行います。1つは、配当平準化が企業の負債コスト(普通社債のスプレッド)に与える影響の分析であり、もう1つは、企業に資金を提供する大口投資家(大株主や銀行)が配当平準化に与える影響の分析です。先行研究によれば、経営者は、減配や増配といった配当の変更に対して消極的です。また、企業の配当政策は、経営者、株主、債権者の利害に影響を与えます。ステークホルダー間の利害対立と配当平準化の関係を多面的に明らかにすることができれば、コーポレートファイナンス研究に対する大きな貢献となることが期待されます。