2024/11/27
科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」です。ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行います。研究者によるピア・レビューという検証プロセスの利点は、研究計画の妥当性を専門家の視点からより正確に判断できるほか、応募者にとって、同じ分野の研究者に自分の研究がどう評価されるかを知る機会にもなっています。このことは、とりわけ若手の研究者にとって一つのインセンティブになっているといえます。本学の研究環境は研究大学としての文化や風土が根付いており、新規課題採択率は、例年全国1位を獲得しています。
今回は、吉岡徹准教授の科研費研究「行政組織におけるフレーミングの帰結:日韓の著作権法改正の比較事例分析」についてご紹介いたします。
研究テーマ:「行政組織におけるフレーミングの帰結:日韓の著作権法改正の比較事例分析」
研究期間(年度):2022 - 2024 研究種目:基盤研究(C) 審査区分:小区分07080:経営学関連
研究計画:
本研究では、類似の法制度を取りながら法改正の結果が分かれた日韓両国でのデジタル産業でのイノベーションの障壁として指摘されてきた著作権の制約に対する法改正の事例の分析を行います。とくに、著作権制度を所管する部局のみならず、イノベーション政策、そして、立法審査を担当する部局との間のフレーミングの競争に焦点をあて、これをイノベーション論、政治過程論、法学の学際チームで研究することで問いに対する解を多角的に導きます。
研究者からのコメント:
イノベーション政策に関しては、「我が国が〇〇分野のイノベーションに劣っているのは、その分野のイノベーションに優れた××国で採用されている△△という法制度がないからだ」という議論が起こりがちです。しかし、そもそも法制度を変えようとすると様々な障壁があることが多く、立法機関(さらにはそれを補佐する行政機関)にとっては容易でない事が少なくありません。しかも、××国の△△法制度は実際は〇〇分野のイノベーションを専ら意識して導入されたものではなく、技術や社会の変化によって結果的に〇〇分野のイノベーションに有利な制度になっていたという例が少なからず存在します。
私達が探求している事例もまさにそのような事例でした。ある種の意図せざる結果として、イノベーションとは関係のない目的で結果的にイノベーションに有利な制度を入れていた事例であり、イノベーションに有利な制度を入れようとすると上手くいかなかった事例だったのです。なぜそうなったのかを普遍的な行動原理の観点から丁寧に読み解き、イノベーション政策の立案に関わる人(議員、行政官、審議会等を構成する学識者、そして、ロビイングに関わる方)に役立つ知見を導出しようと日々もがいています。