【一橋大学の科研費研究】「ディセプティブ・パターン被害の心理的メカニズムの解明と防御システムの構築」/徐 文臻(経営管理研究科 准教授)

2025/09/08

科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」です。ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行います。研究者によるピア・レビューという検証プロセスの利点は、研究計画の妥当性を専門家の視点からより正確に判断できるほか、応募者にとって、同じ分野の研究者に自分の研究がどう評価されるかを知る機会にもなっています。このことは、とりわけ若手の研究者にとって一つのインセンティブになっているといえます。本学の研究環境は研究大学としての文化や風土が根付いており、新規課題採択率は、例年全国1位を獲得しています。

今回は、徐 文臻准教授の科研費研究「ディセプティブ・パターン被害の心理的メカニズムの解明と防御システムの構築」についてご紹介いたします。

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徐 文臻

2011年、中国・南京大学外国語学院を卒業後に来日。名古屋大学大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻で博士(心理学)を取得。在学中にカリフォルニア大学サンタ・バーバラ校コミュニケーション研究科に研究留学し、計算社会科学の手法を習得。 2019年、株式会社KDDI総合研究所、KDDI株式会社に入社し、AI部門、Human Centered AI研究所で研究主査を務めた。2023年に一橋大学大学院経営管理研究科に講師として着任し、2025年4月より現職。データサイエンスと社会科学を融合し、人間の意思決定や行動変容を促す説得的コミュニケーション、行動変容AIの研究を進めるとともに、近年はAIの社会的受容と普及を心理学の観点から探究している。

研究テーマ:ディセプティブ・パターン被害の心理的メカニズムの解明と防御システムの構築

研究期間(年度):2025-04-01 - 2028-03-31  研究種目:若手研究  審査区分:小区分10010:社会心理学関連

研究計画:

限定的合理性を利用して、ユーザを意図的に欺いたり操ったりして個人情報を提供させたり、誤った意思決定を煽るシステムやサービスは、ディセプティブ・パターン(以下、DP)と定義されており、サービスのデジタル変革(DX)によってその使用が加速されつつある。DPは個人に金銭的損失と精神的消耗をもたらすだけでなく、サービスの公平性や社会治安にも甚大な悪影響を与えている。本研究では、社会心理学の理論的知見と情報科学の方法論の融合を通じて、人の意思決定がDPにどのように影響されるかの心理的メカニズムを解明し、DPの被害リスクを予測するモデルと、DPの悪影響を抑制するためのパーソナライズされた介入手法を開発することを目的とする。これにより、オンライン環境での意思決定を支援する、信頼できる人間中心型AIの実現と普及に寄与できる。

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