織田由美子さんが日本消費者行動研究学会の特集論文賞を受賞しました

2025/09/01

トピックス

この度、本学大学院経営管理研究科研究者養成コースを2018年度に修了した織田由美子さんが、日本消費者行動研究学会(会長:松井剛 経営管理研究科教授)において「特集論文セッション:第3期」の特集論文賞(論文)を受賞しました。

(日本消費者行動研究学会のウェブサイト:「特集論文セッション:第3期」での特集論文賞(論文)の審査結果について|日本消費者行動研究学会

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織田さん(右)と松井会長(左)

同学会の機関紙「消費者行動研究」では、特定のテーマで特集論文を募っており、織田さんが受賞した第3期のテーマは「日本の消費者と消費者行動研究」でした。織田さんの論文は「家庭における家事ロボット:矛盾する制度ロジックを保有するオブジェクトと消費者との関係構築」をテーマとし、家事テクノロジーの利用において、効率性を追求することと家族をケアするという文化的対立はどのように解消されるのかについて論じました。

織田さんは、一橋大学商学研究科MBAコースを卒業した後、コンサルティング会社での投資・コンサルティング経験を経て、博士後期課程に進学し、博士号を取得。本学での特任講師を経て、現在は名古屋商科大学の教授を務めておられます。

【研究テーマ】
「家庭における家事ロボット:矛盾する制度ロジックを保有するオブジェクトと消費者との関係構築」
織田 由美子
修了年度:2018年度
所属:名古屋商科大学 商学部教授
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織田由美子さん

このたび、特集論文賞(論文)を賜りましたことを大変光栄に存じます。
私は、消費文化理論(CCT)という、消費を文化や社会の視点から捉える研究領域に取り組んでいます。特に、消費を通じて社会で「当たり前」とされる物の見方がどう変化するのかに関心があります。本論文では、家庭用ロボットを事例に、家事における「効率化」と「ケア」という価値が交差する家庭という場で、技術がどのように受容され、消費者との関係性が構築されていくのかを明らかにしました。ロボットは単なる道具でも完全な他者でもなく、家庭という親密圏で固有の意味を帯び、その関係性のあり方にはジェンダー規範や家族関係といった社会的枠組みが深く関わることを示しました。

こうした研究を進める基盤となったのが、大学院での学びです。指導教員の松井剛先生をはじめとする先生方のご指導のもと、輪読や論文の進捗報告を軸とした議論では、練り上げた(はずの)考えが鋭く問い直され、そのたびに思考を再構築することを迫られました。こうした刺激的なやり取りこそが研究を深化させる鍛錬となりました。卒業後も続く先生方やゼミ仲間とのネットワークは研究を前進させる基盤であり、今回の受賞もその豊かな環境に支えられて得られた成果です。

今後も、消費と文化が交差する場面を対象に、消費者が社会的な規範や空気と向き合いながら新しい消費スタイルを生み出すあり方や、企業やメディアの役割を明らかにしていきたいと考えています。

日本消費者行動研究学会 松井剛会長(本学経営管理研究科教授)

日本消費者行動研究学会は、1992年の設立以来、消費者行動に関する多様で先進的な研究の推進と次世代研究者の育成に努めてまいりました。今回、織田由美子さんが受賞された『消費者行動研究』特集論文賞(論文)も次世代育成のための取り組みです。

織田さんが依拠する消費文化理論(CCT)は、国際的な研究コミュニティにおいてはその存在感を高めておりますが、日本の学界においては依然として少数派に位置づけられています。そのような状況の中で今回の受賞が実現したことは、織田さんのたゆまぬ努力の成果であると同時に、本学会が学問的多様性を尊重し、その発展を支えていこうとする意思の表れであると考えております。

博士後期課程を修了し大学教員としての職務に就かれると、教育や大学業務に追われ、研究に割ける時間が限られるのが一般的です。そのような環境にあっても、織田さんは博士論文とは異なる新たな研究プロジェクトを立ち上げ、今回の成果へと結実させました。今後、次世代の消費者行動研究を牽引する存在としてますますご活躍されることを期待しております。