2024/02/21
本学大学院 経営管理専攻 研究者養成コースの博士後期課程2年の橘樹さんは、2023年12月8日、世界最大の経営学会である米国経営学会(AOM: Academy of Management)のOrganization and Management Theory(OMT)部門が主催するPaper Development Workshop(PDW)に参加しました。PDWとは、研究者や学生が取り組む論文の発展および改善を促進するために開催されるワークショップであり、幅広い研究者を対象に世界各地で開催されています。
シンガポールで行われた今回のワークショップに参加した橘さんに、ワークショップの様子や参加の意義、そして一橋での研究生活について伺いました。
なぜ一橋に?
私は大阪市立大学商学部出身で、当時ゼミでアントレプレナーシップという学問に出会ったことをきっかけに経営学者を目指すようになりました。ただし、経済的理由もあり大学院に入る前に資金づくりのために一度就職し実務を経験しました。大学院試験の準備の際、複数の選択肢を踏まえ、最終的には一橋大学に決めました。
一橋大学に決めた第一の理由は、学部のゼミでの輪読や研究活動を通じて、軽部大教授が執筆された書籍や論文を読み、その緻密な立論と分析手法を学びたいと感じたことがあります。第二の理由は、お世話になってきた先生や先輩にも相談し調べていくうちに、一橋では文献精読や戦略論・組織論といった個別の授業を通じて理論を深く学べるほか、定性的分析法および統計解析など分析スキルを幅広く習得するための体系的なカリキュラムがあることを知り、一から研究者としての素養を鍛えたいと思ったからです。正直、事前には入学後のイメージが明確にあったわけではなく不安もありましたが、信頼する方の後押しもあり入学を決意しました。そして、そのまま一橋大学大学院で博士後期課程に進学し、経営学者への道を歩み始めました。
一橋での研究環境~学習機会の豊富さ
実際に一橋大学に入学すると、入学前には想定していなかった数多くの魅力に気づきました。その魅力の一つは、学習機会が豊富にあることです。指導教員の軽部先生からは、修士課程入学以降、現在までの4年間で数えきれない程の学習機会を提供して頂いています。学生が先生から指導を受けられる「場」は授業やゼミであることが一般的ですが、実際には昼食や夕食での非公式な会話、合宿、国内外の学会、共同研究など色々な場面で学ぶことは可能です。
例えば、軽部先生とはこれまでオランダやイタリアで開催される国際学会に一緒に行き、研究発表を行ってきました。そこでは海外の共同研究者との議論に参加させてもらい、新たな研究に対する考え方を得られるだけではなく、自身に不足する知識や能力について改めて気づくことがあります。また、これまで参加した軽部先生との共同研究プロジェクトでは、京都大学・慶應義塾大学・神戸大学といった他大学の研究者も参加されており、研究チームの一員として一連の研究プロセスに関与することで、調査設計やインタビューでの質問方法、データセットの構築、執筆の過程といった実際に経験しないと習得しづらいノウハウも、見て真似ることで少しずつ身につけることができています。
周囲の一橋の修士や博士の学生からも、それぞれ異なる研究プロジェクトへの参画が研究能力の向上のために良い経験になっているとの声を聞きます。教育や研究に熱心な先生が身近にいることで、学生がより多くの「場」で学ぶ機会を得られていると感じています。
さまざまな先生方の意見をもらえる機会
一橋では、自分の担当指導教員だけではなく、色々な先生方から意見をもらえる機会があることも魅力の一つです。例えば、イノベーション研究センターでは、「IMPP※」というプログラムがあります。プログラムの中には「イノベーションリサーチセミナー」という授業があり、学生は各学期に2回発表を行い、一人では解決できない研究上の課題について先生方に相談することができます。私は定量的分析の方法や解釈でわからないことがあるときに定量専門の先生に相談したり、構想段階の研究のアイデアを発表して意見をもらったりしています。発表の準備は大変ですが、毎回5人程度の先生方の前で発表できる、ある意味贅沢な機会です。このプログラムでご指導いただいた先生には、直接研究室を訪ねてさらに質問をしたり、学内ですれ違ったときに近況報告をしたり、食堂でばったり会ったときに一緒にランチをしたりとプログラム以外の場面でも大変お世話になっています。このIMPPには、他大学や実業界からの参加者もいて、彼らとの交流も大変有意義です。
※ イノベーションマネジメント・政策プログラム(Innovation Management and Policy Program)
海外の研究者との交流機会も
私の副指導教官はパドロン=エルナンデス イバ先生で、国際学会やワークショップに関するさまざまな情報を提供してくれます。また、ゼミに海外ゲストをよく招待されるので、日本にいながらも国際的な研究者と直接交流する機会をいただいています。他にも、一橋には海外からの短期間の客員教授もおられ、その方々とは帰国後も連絡を取り合い交流が続いています。
また、配属される研究室では、先輩や同僚と気軽に相談できる雰囲気も私の研究生活の支えとなっています。例えば、論文を書く上で困っていることや学術文献の共有といった情報交換はもちろん、奨学金や就職活動に関する情報など幅広く細かいことも相談できるコミュニティとなっています。一橋は、先輩が後輩の面倒を親身になってみるという伝統があり、自分も今後同じように後輩に接していきたいと思っています。
今後の目標
今後の目標は、簡単ではありませんが、トップジャーナルに査読論文を掲載し、高い研究成果を残すことです。そして研究者としてレベルアップしていくと同時に、博士後期課程のあとは指導者側になるので、教育者としても自分がゼミで感じたような議論の楽しさを学生たちに伝えていきたいと思っています。