博士後期課程2年・橘さんが米国経営学会主催の国際研究ワークショップに参加①~ワークショップの様子と魅力の紹介

2024/02/21

本学大学院 経営管理専攻 研究者養成コースの博士後期課程2年の橘樹さんは、2023年12月8日、世界最大の経営学会である米国経営学会(AOM: Academy of Management)のOrganization and Management Theory(OMT)部門が主催するPaper Development Workshop(PDW)に参加しました。PDWとは、研究者や学生が取り組む論文の発展および改善を促進するために開催されるワークショップであり、幅広い研究者を対象に世界各地で開催されています。

シンガポールで行われた今回のワークショップに参加した橘さんに、ワークショップの様子や参加の意義、そして一橋での研究生活について伺いました。

シンガポールで行われたワークショップ

PDWの概要

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今回参加したPDWのテーマは"Doing Organizational Research Around the World"で、ミクロおよびマクロ問わずさまざまな領域で、非欧米の研究文脈における組織現象を研究する学者を対象としたワークショップです。このテーマの背景には、近年、欧米地域以外の組織現象を研究することで、歴史的に主に欧米の文脈で発展してきた組織理論を拡張し挑戦する学者が増加しており、こうした研究の価値がAOMのような国際学会で認識されてきていることがあります。PDWに参加するには、自身の研究を英文で5ページ程度に要約し提出する必要があったため、私は日本の新規上場企業を対象とする研究を提出しました(提出後1週間以内に合否の連絡がきました)。PDWには、アジアを中心に約10カ国からおおよそ30名の若手研究者と、AOM側のメンター教員13名が参加しました。

このワークショップは、主にメンター教員によるレクチャーと、参加者の論文について議論するフィードバック・セッションで構成されていました。レクチャーでは、世界的に活躍する著名な経営学者でもあるメンター教員が、グローバルな研究文脈を利用した研究について紹介するとともに、論文執筆の背景にあるストーリーや国際学術誌に掲載されるためのポイントといった論文作成上の実践的な助言を惜しみなく伝授しました。また、フィードバック・セッションでは、2名の参加者に1名のメンターがついて、メンターがそれぞれの論文に対してアドバイスを行う40分間のセッションが2回行われました。レクチャーやフィードバック・セッションの間には、休憩時間が設けられていたため、コーヒーや軽食を楽しみながら他の参加者と気軽に交流することもできました。

PDWの魅力①:論文に対する丁寧なコメント

PDWは、通常の国際学会と比較すると小規模で開催されるため、他の研究者と密なコミュニケーションが可能となり、論文に対する詳細なフィードバックが得られることが多いです。例えば、国際学会では20分発表して10分の質疑応答があって終わることもありますが、今回のPDWでは第一線の経営学者がメンターとして事前に丁寧なコメントを準備してくれており、議論のために合計40分程の時間が与えられました。提出した論文に詳細なコメントを事前に書き込んでくれるメンターもいて、参照した方が良い先行研究の紹介や分析上の課題に対する対処法といった研究アイデアに対する助言をいただきました。さらに、「こう書けば研究内容をよりアピールできる」「ここは査読者から指摘が入る」など、通常の学会では得ることが困難な論文執筆の表現上のアドバイスも得られました。私が今回提出した論文は、まだ研究途上のものでしたが、その研究ステージに合わせた丁寧なコメントが含まれていました。

PDWの魅力②:海外の経営学者や博士学生との密な交流

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インドや韓国からの参加者とともに(橘さん・右端)

私がこのPDWに応募するに至った理由の一つに、私の研究領域であるアントレプレナーシップ分野で国際的に著名な複数の経営学者がメンターやパネリストとして参加することを知ったことが挙げられます。それらの経営学者のプレゼンテーションを見て最新の研究内容を把握することができ、直接話すことでモチベーションの向上にもつながりました。また、他の参加者との交流も大きな収穫でした。互いの研究内容に対する意見交換もありましたが、それだけではなく海外の博士学生の日常生活や、参加する学会や使用するデータベースについてなど幅広く情報交換することができました。食事をしながら深く交流することで、ワークショップ後も続く密なネットワークができることも魅力の一つだと思います。今回交流した参加者と、他の学会やワークショップで会えるのがとても楽しみです。