2025/11/04
10代の頃の夢はギタリスト、商学部でビジネスを学んで曲を売る
中学生の頃は、将来はギタリストになろうと思っていたんです。家族も多くて7人兄弟姉妹の末っ子です。父親は37歳で他界しましたが、それでも母親は自由にやりたいことをやらせる、という主義だったんですね。兄の中にもピアニストだったり、キックボクサーがいたりと、それぞれ自分のやりたいことを追求しています。そこで、自分はどうしようかなと考えたときに、とりあえず音楽が好きだし、ギタリストを目指そうかなと思って練習をしていました。なので、勉強とかも中学2年生の頃までまったくしていなかった気がします。地元はのどかで、塾に通って受験勉強を頑張るというような雰囲気でもなく、自然が豊かで外を走り回って、伸び伸びと育ってきた感じです。
高校は千葉県にある翔凛高校に特待生制度を利用して入学しました。当時、部活動は音楽関係ではなく、英語部に所属して英語ディベートをやっていたのですが、その時に鍛えられた英語力が大学で生かされています。高校入学前から英語は自分の強みとして持っていて、英語で話すことは比較的ハードルは低かったと思います。地元はそんなに都会ではないので、隣近所の人たちも親戚みたいに子どもたちの面倒を見てくれたんですが、その中にオーストラリア出身のおじさんがいました。時間のあるときなど一緒に遊んでくれて、日本語が話せないので会話のやり取りの中で英語を少し学ぶことができました。
高校生になってもギタリストになりたいと考えていて、ずっとギターの練習をしていました。兄も音楽をやっており、音楽的な才能が凄くあるんですけれど、当時はあまり売れていなかったんです。だから良い音楽を作ってもビジネスができないと売れないのかなと思っていました。じゃあ、音楽で成功するにはどうしたらいいのかと考えたときに、単純に大学の商学部に行ってビジネスの勉強をしようかなと思ったんです。大学のこともあまり知らなくて、友だちにいい商学部がある大学を知っている?と聞いたら、「一橋大学の商学部はトップレベルだよ」と勧めてくれました。それで商学部に入って、自分の曲を売ろうと考えたわけです。
音楽のビジネスを成功させるために一橋の商学部を目指したわけですが、高校2年生頃になるとなんか違うなと思って、ギターはそんなに上手くないし、と考え方も変わってきました。商学部でビジネスを学んで音楽で成功!というような、取ってつけたような目標だったからかもしれませんが、そこでミュージシャンへの道は諦めたわけです。けれど、結果的に一橋大学でちゃんとビジネスを学んで、それで上手くお金を稼げたらいいんじゃないという、少し投げやりな気持ちで大学入試に向けた勉強は続けることにしました。勉強は他の受験生と比べればスタートが遅かったため、受験のやり方については少し工夫をしましたね。ゴールは一橋大学商学部と決めていたので陸上競技に例えるなら、他の人が9種目全部の練習をしているところ、自分はハードル1種目(一橋大学商学部)に絞り、主に過去問題をやって、無事に合格することができました。
「イノベーション経営特論」の授業で、研究に近い経営学に出会う
一橋大学に入学して、学部3年生の時に軽部大先生(経営管理研究科教授)の「イノベーション経営特論」という授業を受けました。論文を読んで、レジュメを作ってという内容でした。当時の自分にはレベルが非常に高くて、いい意見とかあまり言えませんでしたが、きちんと論文を読んで研究に近い議論をするというのは、その授業が初めてだったと思います。学部1、2年次の授業は経営実務に近い内容ですし、そもそも経営学は実務的側面もあります。ですので、研究としての経営学とはどういうものか、同時に一度大学院のゼミを見てみたいなと思いました。そこで、軽部先生に、ありがたいことに参加することを許可していただきました。大学院ゼミに参加したのに見学だけではもったいないので、厚かましくも何か研究に参加させてもらえませんか?とお伝えしたところ、貴重な経験をさせていただきました。
実際に大学院ゼミで研究に触れてみると、学部ゼミでの勉強とは違いました。もちろん卒業論文も研究ではあるのですが、人の言葉を借りれば、「卒業論文は既存の理論の中で言われていることを新しい現象でもう一度再確認する作業」であるけれども、「修士論文や博士論文は、既存の理論の中で言われていないことを提案する作業である」という方がいて、なるほどと思いました。また、学部の勉強は、どちらかというと実務に近い傾向がある一方で、大学院は論文として成立する研究を求めると思うのでそこが大きな違いかなと思います。自分は学部生時代に大学院ゼミを見させていただいたおかげで、研究が実際にどういう風に進むのかイメージがつきました。これなら大学院で研究をやりたいと思って「学部・修士5年一貫教育プログラム」を利用して修士課程に進んだ感じです。5年一貫は、学部の4年次に修士1年の授業が入ってくるので正直大変なところもありますが、自分の場合は経済的余裕もなかったため、なるべく早く卒業したくて申し込んだというのもあります。論文も、授業や研究参加の機会をいただけたため、少し早めの学部3年生頃から読み始めましたが、もし研究者養成コースに進学したいという人がいれば、学部のうちから研究や論文に触れてみることをお勧めします。どんな論文を読めばいいかはわからないと思うので、それは身近な先生に聞くといいでしょう。