【一橋大学の科研費研究】「国家による貨幣独占とステーブルコインの動学一般均衡分析とその政策的含意」/中村 恒(経営管理研究科 教授)

2025/12/15

科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究費」です。ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行います。研究者によるピア・レビューという検証プロセスの利点は、研究計画の妥当性を専門家の視点からより正確に判断できるほか、応募者にとって、同じ分野の研究者に自分の研究がどう評価されるかを知る機会にもなっています。このことは、とりわけ若手の研究者にとって一つのインセンティブになっているといえます。本学の研究環境は研究大学としての文化や風土が根付いており、新規課題採択率は、例年全国1位を獲得しています。

今回は、中村恒教授の科研費研究「国家による貨幣独占とステーブルコインの動学一般均衡分析とその政策的含意」についてご紹介いたします。

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中村 恒

2005年にシカゴ大学経済学部で経済学博士号を取得し、東京大学大学院経済学研究科での常勤講師を経て、2011年より現職にある。なお、1994年から2001年まで日本銀行に総合職として勤務した。最近の研究上の関心は、非対称情報の下での企業・金融機関のリスク管理と価値評価にある。より具体的には、企業が自らの企業情報に関し外部投資家に比べさまざまな私的情報を有するという現実的な状況において、金融派生商品市場や証券化の急速な発展のなかで企業や金融機関がどのようにリスクを管理し、金融資産がどのように価値評価されるのかについて、理論・数値分析を行い、そして金融システム安定政策への含意を導く。

研究テーマ:「国家による貨幣独占とステーブルコインの動学一般均衡分析とその政策的含意」

研究期間(年度):2025-04-01 - 2028-03-31  研究種目:基盤研究(C)  審査区分:小区分07060:金融およびファイナンス関連

研究計画:

現在広く流通している暗号通貨としてステーブルコインに注目し、ステーブルコインの価格付けや収益性・リスク、従来からの国家独占の貨幣制度の経済効率性への暗号通貨の影響をマクロ経済学的に動学一般均衡分析します。ステーブルコインはブロックチェーン技術の利便性と伝統的貨幣の融合が図られ、本研究のステーブルコインの分析は金融経済学上も政策実務上も重要な研究意義を持ちます。確率解析の数理技術を駆使して、ステーブルコインの暗号通貨技術のミクロ経済学と貨幣制度のマクロ経済学の2つの先行研究分野について、それらの間の溝を埋め融合することにより、国際的に新しい研究フロンティアを切り開きます。