みずほ証券×一橋大学 学術コンファランス-「モチベーションと組織開発の研究」 「上場企業の資本政策に関する研究」

2026/04/30

3月13日、本学千代田キャンパスにおいて、みずほ証券株式会社と一橋大学による2つの共同研究の報告会、「モチベーションと組織開発の研究報告会」および「上場企業の資本政策に関する研究報告会」が行われ、各研究者よりこれまでの研究成果の報告がありました。また、異なるテーマの研究者が一堂に会することで、他の領域からの質問や意見が交わされ、多様な視点で学際的なディスカッションが展開されました。

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モチベーションと組織開発の研究報告会

座長:島貫智行教授(中央大学)

第1報告 「柔軟な勤務形態が仕事におけるスライビングに与える影響」
猪瀬廉太郎氏(一橋大学大学院)
第2報告 「インクルージョン知覚が従業員の率先行動に影響を与える心理メカニズム」
山本華氏(横浜国立大学大学院)
第3報告 「看護領域における向社会的モチベーション:動機の自律性水準ごとの効果と相互作用を中心に」
シンハヨン准教授(大阪大学)

討論者:坂爪洋美教授(法政大学)、林洋一郎教授(慶應義塾大学)

冒頭、座長の島貫教授より、「日本ではワーク・エンゲイジメントが広く知られているが、海外にはそれ以外にも注目されている概念がある。本日はその中から3つを取り上げて報告する。日本ではほぼ研究の蓄積がないことから、新しい知見となるだろう」との紹介がありました。

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参加者からも質問が活発に

第1報告では、仕事において活力感と学習感の両方を経験している個人の心理状態であるスライビング(thriving at work)について報告されました。柔軟な勤務形態(flexible work arrangements)がスライビングに正の影響を与えることや、エージェント的職務行動がその関係を媒介することが示されました。

第2報告では、職場における個人のインクルージョンの知覚(work group inclusion)が率先行動(taking charge behavior)に及ぼす影響について報告されました。インクルージョン知覚が率先行動に正の影響を与えること、その関係を心理的エンパワーメントが媒介することが示されました。

第3報告では、看護分野における向社会的モチベーション(prosocial motivation)の自律的側面と統制的側面が及ぼす影響について報告されました。2種類のデータを用いて、看護師の向社会的モチベーションと援助行動の関係、看護学生の向社会的モチベーションとウェルビーイングの関係が検討されました。

上場企業の資本政策に関する研究

座長:安田行宏教授(一橋大学経営管理研究科)

イントロダクション 「日本の株式会社が幸せであるために必要なこと」
岩佐慎介氏(みずほ証券株式会社)
第1報告 「マクロ経済不確実性が資本コストに与える影響」
熊本方雄教授(一橋大学経営管理研究科)、呂健昌氏(一橋大学大学院)
第2報告 「日本市場における有効なファクターモデルの構築」
柳樂明伸氏(札幌大学)
第3報告 「銀行依存企業と自社株買い」
寧東来氏(一橋大学)

冒頭、座長の安田教授より、「2023年のコンファランスはコロナ禍直後であったため、企業の新陳代謝をテーマとし主に退出に焦点を当てましたが、それに加えてその後は参入やスタートアップに注目してきました。そうした中、本日の報告会では、日本企業に関する問題意識として資本コストを中心に取り上げていきます」との紹介がありました。

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みずほ証券・岩佐氏によるイントロダクション

イントロダクションでは、東証上場会社の約半数が時価総額の早期の頭打ちや流動性不足に悩み、海外の機関投資家の投資対象となりにくいという日本の株式の投資環境について紹介がありました。その背景には、IPO時点で時価総額が小さく、かつ成長に必要な資金を十分に調達できていない事例が多いことや、資本コストを過小評価したまま上場してしまう課題があるとみられます。結果として、上場後に自らの収益性が資本コストを上回れず、株価や上場後の資金調達に悪影響を与えている恐れがあると考えられます。こうした課題を踏まえ、適切な資本コストを把握し、それに基づいた資本政策と成長戦略を立てることが重要であり、また、資本コストを正確に評価できるツールや研究の整備が求められていると論じました。

第1報告では、インフレ進行、金融政策の転換、地政学リスクなどを背景に「インフレと金利のある世界」における資本コストを問題意識として、近年高まるマクロ経済の不確実性による企業の資本コストへの影響について、産業別および企業特性の観点から実証的に分析した研究が報告されました。

第2報告では、日本の株式市場において、企業の資本コストや株式リターンをより適切に説明できるファクターを探ることを目的とした研究が報告され、企業規模や財務指標に加え、流動性や売買動向といった動的な情報も取り込めるIPCA(Instrumented Principal Component Analysis)という手法が有効であると論じました。

第3報告では、株価の過小評価に対する企業の自社株買い行動が、銀行依存度によってどのように異なるかを、日本の企業データを用いて分析し、銀行依存企業は非依存企業に比べ、株価が過小評価されていても自社株買いの実施確率や取得金額が有意に低いという分析結果を報告しました。

最後に、安田教授より、本産学連携プロジェクトへのみずほ証券の多大なる貢献に対し、謝辞が述べられました。

(ご参考:みずほ証券寄附講義ウェブサイト