2026/06/09
研究者養成コース博士後期課程1年の高橋優里子さんが、採用率わずか11.2% (2026年度)の日本学術振興会「特別研究員(JSPS・DC1)」の社会科学区分に採用されました。本学商学部より大学院経営管理研究科へ進学し、5~7月にEuropean Accounting Association、日本経済会計学会、Accounting and Finance Association of Australia and New Zealand と3本の学会発表があり、7月からはニュージーランドのオークランド大学へ研究留学を控えています。今回は、今後さらなる飛躍を遂げる研究者として第一歩を踏み出した高橋さんに、一橋大学商学部から大学院への進学、そして現在の研究や今後の抱負についてお話を伺いました。
私が中学生の頃は英語にハマっていて、将来は通訳になりたいと思っていました。進学した都立三田高校も国際教育に力を入れている高校で、大学は国際学部に行きたいと思い英語を頑張って勉強していました。中学の同級生が国際関係の学生NPOで活動していて、私も少し手伝いをしたことがあります。ですが、実際関わってみると、彼女の熱量と比べ、自分は少し違うと感じ、私には将来この道に進むのは難しいのではと思いました。でも、NPOの資金繰りは大変だという話を聞いて、何か役に立てるようなことができるといいなと考えていました。そこで「それなら、国際組織で活動しているような人たちを支えられるような仕事ができるといいな」と思いました。それで、私はビジネスを勉強して、活動を支えたいなと思って商学部を目指しました。
商学部には経営を学びたいと思って入ったので、初めの頃は会計やファイナンスにはあまり興味がありませんでした。しかし、一年次に金融の基礎を学ぶ中で「金融の時間価値」という経済原則を学んだんですね。"今日の1万円と、明日の1万円の価値は違う"という考え方ですが、これが「なんだか面白いな!」と思ったのがファイナンスに興味を持ったきっかけです。数学は苦手だし、ファイナンスもバリバリできるわけではないけれど、「挑戦したいです」と中野誠先生のゼミの門を叩いたら意外にも学問にはまってしまいました。それ以来ずっと中野先生にお世話になっています。コーポレート・ファイナンスの考え方は、中野先生がおっしゃるには、金融ほど公式に従って解がしっかり出てくるわけではないけれど、経営ほど個人のセンスが求められるわけでもなくて、それらの中間にあるものだそうです。ある程度の型はあるけれど、いろいろできるというところが魅力で研究を続けてきました。
私は国際関係にも興味があったので、渋沢スカラープログラム(SSP)で学び、海外留学も絶対したいと考えていました。留学先に選んだオランダは、英語が比較的通じる国ですし、世界で初めて「株式会社」が作られた国ということもあり、商学部生としては一度行ってみたいと思いました。海外で初めての一人暮らしで、自分の拙い英語が通じないこともあり、苦労は多々ありましたね。それでもやり遂げたということが自分の中で自信になりました。留学先の大学では、多彩な授業を受けることで知的好奇心も満たされてとても楽しかったです。親には留学費用は負担させないと決めていたので、奨学金を出していただいた"如水会海外留学奨学金"にはとても感謝しています。
大学院へ行って研究者を目指そうと思った理由の一つとして、中野先生の姿勢・生き方に少し憧れというか、尊敬の念を抱いていたというのがあります。中野先生からは「研究することが大好き」というオーラがあふれているのを感じ取れます。人生を思い切り楽しもうとしているところや、私たち学生と周りの人を全力で幸せにしようと考えていらっしゃるんだろうなということが伝わってきます。例えば、ゼミでも我々若輩者の意見を面白がって楽しそうに聞いてくださいます。先生は何十回もゼミをやっていますし、私たちより何百倍も何千倍も知っているはずなのですけれど、それでも毎回何か新しいことを探していて、見つけるとその気づきをとても楽しそうに私たちと共有してくださいます。そうした先生の姿勢というか人生の生き方に憧れます。また、企業のトップの方に対する時と私たちへの対応についても、変えることは一切ないというところも尊敬しています。中野先生に出会えたことが本当に幸運だったなと思っていますし、私も将来、そういう研究者であり教員になりたいと思っています。
現在は、企業を取り巻く競争環境や事業環境がどう企業の情報開示に影響を与えるのかということについて研究をしています。もともと開示情報については、企業から投資家、資金提供者に向けた情報伝達という機能が第一に語られてきました。しかし、企業の開示情報は公開情報なので、資金提供以外の利害関係者全員(従業員、競合他社、サプライヤーなど)も入手することができます。そうすると、企業は利害関係者も利用することを前提に考えた情報開示をしようとする、と考えられます。このような観点から開示行動を分析する研究が増えてきており、私も興味を持って研究をしているところです。
学会発表では、最初の頃は厳しい指摘を受けるのではないかと怖かったのですが、皆さん真剣に、そして温かく聞いてくださって「こうしたら良いんじゃない」とか、「すごい頑張っているね」と声を掛けてくださいます。そして何より、学会の開催期間は、いろいろな研究者とずっと研究の話ができるので、非常に贅沢な時間を過ごせています。知らない研究をされている方も沢山いらっしゃいますし、各国の研究者とも話ができて、世界は広いと感じています。7月からはオークランド大学に研究留学をしますが、学会で知り合った先生が快諾くださってこの留学の話が進みましたし、その他にも学会でのつながりから論文の投稿のお誘いもあり、本当に有り難いご縁をいただいています。
今後は、まずは博士後期課程できっちり論文を発表して博士号をいただいて、そして生涯研究を続けられる一人前の研究者になりたいと思っています。人としてもこの人と一緒に何かやれば面白そうだとか、面白い研究ができそうだなと思ってもらえるような人間になれれば嬉しいです。そして、私も中野先生のように研究を楽しんでいる姿勢を、後輩の研究者や学生に見せていきたいと思っています。私が先生に教えていただいたように、「社会について考える」ということのおもしろさを今度は私からも伝えていきたいですね。
私自身、一橋に入学する前までは、研究者になるなど考えてもいなかったのですが、いろいろな出会いがあって、今は研究の道に立っています。後輩の皆さんは、"面白そう"とか、"一橋大学で学びたい・研究をやってみたい"とか、興味を持ったということ自体に何か縁があると思うので、何にせよその感情に素直になってみてほしいです。苦労は多々あると思いますが、「好きこそ物の上手なれ」と言うように、好きならきっとやっていけるので、怖がらず挑戦してみてほしいなと思います。