「研究者養成コース」の魅力――島本教授・藤原教授・安田教授・福地准教授に聞く①

2022/10/19

「研究者養成コース」の魅力――島本教授・藤原教授・安田教授・福地准教授に聞く

「深く考えることが好きで、とことん打ち込みたい人、研究者養成コースで待っています」

一橋大学大学院経営管理研究科の「研究者養成コース」は、企業や市場の研究に携わる専門人材を育成するコースであり、修士課程2年と博士後期課程 3年で構成される。博士号まで取得した卒業生のほとんどは大学教員になる。本コースの教育内容や特色、「研究者」という職業の魅力などについて、経営管理研究科の島本実教授・藤原雅俊教授・安田行宏教授・福地宏之准教授の四氏に語ってもらった。

【研究者養成コースの強みとは?】
伝統ある少人数教育で、多くの大学に教員を輩出

島本実教授
島本実教授

島本教授 「一橋大学は開学以来、産業界をリードする人材を数多く輩出してきました。他方、戦前から全国の商業教育機関(高等商業学校や商科大学)の"総本山"と言える存在であったため、戦後においても全国各地の大学の経済学部や商学部に、多数の商学・経営学系教員を送り出す機能を担ってきています。現在、経営管理研究科の研究者養成コースは大学教員養成機関、つまり"大学教員になるための職業訓練機関"として、その中心的役割を果たしています。実際に、修士課程入学者の多くが博士後期課程へ進み、大学教員への道を歩んでいます」

もちろん、修士課程の2年間で「自分は研究者には向かない」と感じた場合には、博士後期課程には進まずにシンクタンクやコンサルティングファームに就職するなど、より実務寄りの専門キャリアを追求する道もある。他方、同じ経営管理研究科のMBAコース(経営分析プログラム、経営管理プログラム)などで学んでいるうちに研究が面白くなり、博士後期課程に進む学生も少数ながらいるという。

では、研究者養成コースの教育の特色はどんなところにあるのだろうか。

島本教授 「一橋の伝統である、ゼミナール(ゼミ)を通じた少人数教育は大学院教育でももちろん貫かれており、一人ひとりの学生の個性に合わせて丁寧な指導を心がけています。近年は大学院カリキュラムの体系化が進み、複数の教員が研究会などを通じてチームで指導する『研究領域演習』も取り入れられています。教員から以外に、先輩や同級生からアドバイスや刺激を受ける機会も多くあります。一橋の研究者養成コースには全国の大学や海外から優れた大学院生が集まってきます。このような多様性も、本コースの強みになっていると思います」

藤原教授 「『研究領域演習』は博士後期課程にあり、経営、マーケティング、会計、イノベーション、金融の領域別に設けられています。経営学・商学分野で大学教員になるためには、博士課程の間に査読付きの論文が少なくとも3本ぐらいはほしい。したがって、研究領域演習においては、国際的な学術専門誌(ジャーナル)や国内の有力な査読誌に投稿して掲載されるレベルまで、論文やその発表に対して、指導を行っていきます。複数の教員から、『そのテーマだったら、必ずAという角度からこんな突っ込みが入るよ』とか、『Bという視点からはこういう貢献が見込める』などといった具合に、コメントが繰り返されます。いわば論文審査の模擬演習ですね。こうした様々な建設的批判やコメントを通して、大学院生を鍛え、より高いレベルの投稿論文を執筆できるように指導していきます」